カノエア!
第5話 (完全改訂版)
銭湯へ行く話 前編
眠気を払いのけ、俺は起きた。
・・・ったるい。
さて、秋子さんの陰謀(断定)によってお泊りとなった観鈴は現在観鈴が隣の部屋で寝ているはずだ。
となり、といえば名雪の部屋である訳だが・・・・。
じりりりりりりりりりりりりり
じりりりりりりりりりりり
てろてろてろてろ……
ずだだだだだだだだだだっ……
ズデンッ。
物体が地面に落下する音だ。
多分、観鈴は快眠から一気に叩き起こされ、しどろもどろしたあげく、くるっと回転し・・・
落ちたのだ。
取り合えず、うるさい。
だが、この程度で名雪は起きはしないだろう。
仮にも、眠り姫の称号を色んな方々から授かっているんだ。
ほって置いたらおやつの時間を通り過ぎるなど、必須、いや必然。
儚い命を落とした観鈴に俺は合掌し、自室のドアを開けた。
ソファに腰掛け、朝のニュースを再確認する。
何やら、都内でやくざが抗争して、高速やら、一般道やらが数時間凍結状態らしい。
もっとも、遠く離れたこの辺にはまったく無縁な話しだけど。
「がお……、おはようございますぅ」
「おうっ、おはよう、観鈴。 爽快な目覚めだったか?」
「祐一さん、冗談キツイ」
むっ――どうやら、観鈴は体内時計ドウリに起きないとテンションが低い人種らしいな。
俺も、そんなもんだ。 真琴あたりなら、そうでもなさそうだが、あゆも怪しい。
そんなことを考えているうちに、 寝ぼけ眼の観鈴は躊躇いもなくふらふらとキッチンに姿を消した。
「なあ、観鈴〜」
「ふぁ〜い?」
「欠伸しながら返信するとは、芸が達者だな」
「ち、違う、ただ、眠いんです」
「何故?」
「……」
「と、それはいい。 なぁ、今頃、あゆと真琴、朝風呂にでも入ってると思うんだ」
「うんっ、わたしもそう思う」
「で、だ。 俺も遅れとってはいけないだろう」
「?」
「今から銭湯に行かないか?」
「にはは……、銭湯?」
さくっ、と乾いた音がした。
「わっ、たいへん」
「どうしたっ?」
「が、がお……、わたし、ピンチ」
「?」
俺は気になってキッチンへ向った。
そこには、指を少し切ったのか、人差し指からぽたぽた、血を流す観鈴がいた。
おろおろと、俺と指を交互に見つめる観鈴……。
んなことしてる暇があったら、さっさと消毒しろ。
・・・もしや。
「1つ聞くぞ?」
「にはは、どうぞ」
観鈴は無理して笑う
「お前、血を見ると、竦みあがるタイプじゃない?」
「――わ、わかりません」
まっ、ご名答らしいな。
俺は観鈴に応急処置を施すべく、ダイニングの救急箱を持ってきた。
最近は赤チンじゃないんだな、と感心しつつ、オキシドールをこれでもか、と含んだ
綿を観鈴の傷口に染み込ませる。
「――っ!」
「我慢しろっ!! 女の子だろっ!」
「ひ、否定できない」
と、それはさて置き、実際こんな怪我唾付けときゃなおる。
かなり不衛生だという話だがな。
乾いたガーゼを、傷口にあて、何か、くもの巣みたいなのでそれを覆う。
これで、応急処置はおしまいだ。
「えっと、ありがとうございます」
「ああっ、目、覚めただろ?」
「にはは、完璧に覚めました」
「んじゃ、朝ごはんよろしく」
「ぶいっ!」
観鈴はピースサインをする。
目玉焼き、ウインナー、大根の味噌汁、艶のある白米
……何故かパック入りの怪しいジュース。
今日の食卓の全貌だ。
ちなみに、これじゃ、物足りない俺はふりかけを追加した。
「にはは、おいしい」
「す、吸えない」
程なくして、俺はジュースに手をかけた。
飲み方が胡散臭い。 かなり、良くふってお飲みください……ちょっと待て。
「ねぇ、祐一さん、ホントに銭湯行くんですか?」
「んっ?」
あたかも俺の思考を阻止するかのような観鈴の質問、
そういえば、さっき、んなこと言ったっけ・・・。
「――」
まさか、頭に描いたことをそのまま言ったなどとは言えないだろう。
「祐一さん?」
「ああっ、そうだな。 あゆたちに遅れをとるのは心もとない。
よって、俺は夕方、銭湯に行くっ。
――でも、2人てのは寂しいな。 香里たちでも誘うか?」
「電話するんですか?」
「いや、こういう日は、あいつのことだ、百花屋に行けば多分会える。
まっ、昨日の案内の続きだ。 今日は商店街散策第2弾を決行するぞっ」
「にはは、おもしろそう」
「それについては是非を問わない……まっ、お互い寝巻きだし、
10分後、玄関に集合、でいいか?」
「了解ですっ!」
ズズズズズッと、ようやく飲める範疇になったパックジュースを飲み干す。
ちなみに観鈴は食事中に飲み終えたらしい。
是非、コツを教えてもらいたいものだ。
観鈴は、腕を額に掲げ、イエッサーとでもいいそうなポーズをとって、どたどたと
二階に上がっていった。
・・・そんなに商店街散策がうれしいか?
俺も着替えよう。
まっ、ご近所だし、ポロシャツとGパンが妥当だろう。
商店街は昼前、ということもあって、客で賑わっていた。
俺は、ちょくちょく観鈴に店の紹介をしながら歩く。
件のショウウインドウに観鈴の目が行かなくなったのは謎だった。
そして、百花屋。 客も、メインは学生、というか買い物帰りの客が多いようだ。
でも、知り合いがいた。 美坂姉妹ではない。
舞と佐祐理さんだ。
「ようっ、舞、佐祐理さん」
「あははー、祐一さん、こんにちは・・・、かわいい子ですね〜、妹さんですか?」
「佐祐理さん、俺の親戚に金髪娘はいないよ。
こいつは神尾 観鈴、
秋子さんの友達の娘さんだ」
「……何時までたってるの?」
「・・・・・」
相変わらず、状況を無視するな、お前。
俺は舞にそんなアイコンタクトを送ってみる。
バリバリ無視されたあげく、舞は甘そうにモンブランを口に運んだ。
「祐一さん、いつまでそこに立ってるの?」
「観、観鈴、お前もか」
ちゃっかり窓際に座っている観鈴、俺はその横に座った。
「へぇー、観鈴さんの家は、再開発区にあるんですか〜
いいですねー。 佐祐理も行ってみたいです」
「……わたしも行きたい」
「あはは〜、じゃあ、舞、今度、授業サボって行こうか?」
コクリッ
「おいっ、舞」
「……何?」
俺は、一まず、冗談で提案してみようと思う、アレについて。
「お前、銭湯好きか?」
「お風呂は嫌いじゃない」
「はぇ〜、祐一さん、ガス止められたんですか?
それなら、お風呂、貸してあげますよ〜?」
「だめだっ、それはそれでいいかも知れない――でもなっ!
でもっ、俺は富士が、九十九里浜が、松が描かれたあの銭湯じゃなきゃ嫌なんだ」
「……バカ?」
「それで、だ、俺と観鈴は銭湯に行くつもりなんだ。
お前、来るか?」
「神田川?」
ゴンッ
「あはー、祐一さんと観鈴さんはそういうご関係だったんですか〜」
「俺は、俺は赤い手ぬぐいをマフラーなんかにしないし、春先だ。
冷たかったね、とかも言わない――」
「祐一さん、何もそこまでムキになる必要ないんじゃ……、
あの、佐祐理も行っていいですか?」
「えっ、構わないけど、いいの?」
「はいっ、佐祐理は、この目でしっかり舞の成長を焼き付けるんです」
・・・精々頑張ってくださいな。
一端、俺たちは解散した。
そして、日も暮れた5時前、再び、百花屋の前に集合。
銭湯に向って歩き出す・・・・・。
あとがき
5話は死滅しました。
だって舞と祐一がラブラブじゃ、かのえあ!の本旨と違いますし……。
初志もやぶっちゃ・・・、ということです。
近いうちに後編もアップ予定。
ではっ。
感想とかもらえると嬉しいです。
とっぷ
