やっぱり、都合では生きられない、ということだろうか?

真琴はそう思った。




 真琴持論
 





 駅前のベンチの前、そこが集合場所。

 風が真琴の頬を触っていく。
 
 時節は問わない。ただ、まだ雪の季節ではない。

「寒い……もう、どうして来ないのよぅ・・・」

 待ち人来ず。

 すでに10分が経過、待ち人はまだ来ない。

「……祐一のバカ」



「まったくだよね」

「えっ?」

「うぐぅ、まったくだよねって言ったんだよ」

 話しかけてきたのは自分と同じくらいの背丈の女の子。

 赤いカチューシャをつけた亜麻色の綺麗な髪の彼女は
にこにこと笑っている。

 それが妙に腹立たしい。

 なぜなら彼女は真琴の知り合いだから。

 彼女の名は月宮 あゆ。わけあって真琴の義理の姉なのだ。

「あゆ、なんであんたがここにいるのよぅ!」

「うぐぅっ!?だって祐一君がここで待ってろって―――あっ!」

「……まさか、ゆういちいいいいいっ!!!」

「ま、真琴ちゃんっ!」

 走り出そうとした真琴、焦ったあゆは思いっきり真琴の手を掴む。

「はっ、離しなさいよっ!あゆ、祐一に騙されたのよっ?
どうしてそう冷静でいられるの?」

「う、うーん、それは多分、祐一君だからだよ」

「・・・・・・・」

 真琴はあゆのその飾りっ気の無い一言におおいに納得した。

「うぐぅ、まだ不満?」

「あっ、当たり前でしょ?」



「……そうだっ、じゃ、ボクとデートしようよっ!」

「はっ?」

「だーかーらっ、ボクとデートしよう?たまには姉妹水入らずもいいでしょ?」

「あゆあゆにしてはまともなことを……」

「うぐぅ…、真琴ちゃんまでぇっ、ボクはあゆだって何度要ったらわかるんのさっ!
そんなこと言ってると肉まん奢ってあげないよっ?」

「に、肉まん!?……あ、あゆにしてはいいアイデアね」

「それじゃ、行こうか真琴ちゃんっ!」

「……わかったわよぅ」

 あゆは真琴を手篭めに取ることに成功した。

デート、といっても別に大したものじゃない。まずはコンビ二。

もちろん真琴の肉まんを買うためだ。

 それから商店街をぶらぶら・・・。

気がつけば知らない道に出ていた。

「ねぇ、あゆ、ここ、どこ?」

「あれ、真琴ちゃん、知ってたんじゃないの?」

「し、知らないわよぅっ!あゆについてっただけなんだからっ!」

「……迷子、だねっ」

「ま、まだそう決まったわけじゃないわよっ!、ほらっ、そっちにも、
あっちにも曲がり角があるじゃない!!」

「――――うんっ」

 あゆは軽く頷いた。結局また見知らぬ道をぶらぶら・・・

 真琴は一軒の本屋の前でストップした。

 で、財布をとりだす。



「真琴ちゃん?」

「なっ、なんでもないわよぅっ!!」

「わっ、そんなにどなることないじゃないかっ!びっくりしたー」

「はいっ」

「うぐぅ?」

「はいっ」

 真琴はあゆに左掌を差し出した。

「お金よっ、お金っ!」

「……真琴ちゃん、ちょっといい?」

「なっ、何よぅ……」

「秋子さんにもそれできる?ボク、真琴ちゃんのお姉さんだよ?
喝挙げ紛いなことするんだったら―――許せないなぁ」

 あゆは真剣に真琴の目を見つめていた。

「だって、さっきは肉まん奢ってくれたじゃないっ!」

「それとこれとは別だよっ!」

 妙に気迫の篭ったあゆの声、思えばあゆの真剣な声なんて
真琴は来たことがなかった。

「確かにさ、ボクはドジでおっちょこちょいで、おまけに不器用だよ?
でもさ、真琴のお姉ちゃんなんだから、最低限譲れないものだってあるよっ」

「ば、ばっかじゃない?あゆあゆのくせにっ、生意気なんだからっ!」

「うぐぅ、生意気でもいいからさぁ……やっぱりこういうのって
良くないと思うよっ!」

 

 その時、本屋の入り口から店員が現れた。

「うぐっ」

「あっ」

「……営業の邪魔をするんですか?」









 ぶらぶら・・・と、あゆと真琴は終始無言だった。

 やがて、見慣れた商店街にたどり着く。

「あっ、タイ焼き屋だっ!!」

「…………奢らないわよっ」

「うぐぅ…、だれもそんなこと言ってないもん」

「ふんっ」

 ご機嫌斜めな真琴をおいてあゆはタイ焼き屋へ走った。

 

・・・数秒後。

「うぐううううううううっ!!!!!」

「へっ?」

 あゆは疾走している。いや、逃げている

 後ろから追っかけてくるのは……

「あ、あゆ……」

「ま、真琴ちゃん、に、逃げるよっ!!」

「ええっ!?」

 真琴は心底後悔した。一度でも、反省しようと思ったさっきのことを

 取り合えず、眼前に迫る敵から逃げるべく踵を返し、風とかした
あゆを追った。

「うぐうううううっ!! 」

「なんであたしも逃げなきゃいけないのよぅっ!!」

 
 あゆの捨て身の行為など真琴に届くはずがない。

 ただ、ろくでもない姉をもった、とだけ今は思っていた。




 だから、真琴は再び思った。世の中都合では、生きられない、と。