能力者、水瀬 秋子の家は対追求者対策本部、という位置づけがなされていた。 といっても能力者は秋子を含め50人程度の少数派である。
 後天的に能力を覚醒させる、とはいうものの、追求者と戦うということが前提として提示されていることもあり、秋子は本人の意思を尊重し、合意の上で儀式を執り行う。 対する追求者はそんなことお構いなしだ。
 
 金にものを言わせ、能力の覚醒を促進し、仮に牙をむいたり、 戦いを拒めば、洗脳処置も執り行うという。 だから、 秋子には確実な最強助っ人、アルクェイド・ブリュンスタッドを必要としていた。





 第1話



 
「今日は良く、人と話す日ね」

 自分の前に佇む少女、天野 美汐を見据え、アルクェイドは呟く。そんなアルクェイドの秀麗さに美汐は思わず嘆息した。

「ねぇ、 名前くらい聞いてあげてもいいわ。だから、もう、わたしの眠りを邪魔しないで」

 鬱陶しげにアルクェイドはそう言った。

「――それじゃあ、私がここに来た意味が無いです」

 フッと、美汐は微笑むと、 一歩前にでる。

「協力してください。 アルクェイド・ブリュンスタッド」

「元はと言えば、 あなた達の蒔いた種なんでしょ」

「そうですね。 でも、もう過ぎてしまったことです――それと、
私はそのまま、その言葉をあなたに返します」

「……」

「私はやり合う気などないです。 存在意義を持たないあなたなどとは」

 アルクェイドの目が金色に染まる。 魅了の魔眼、知識人はアルクェイドの金色の瞳をそう呼ぶ。

「――っ!」

 体が動かない、 言葉が発せない……、 まるで人形にでもなったのでは?そんな感覚が美汐を襲う。

「確かに、 そうかも知れない」

 ゆっくりと歩み寄ってくるアルクェイドに足掻くこともできない美汐は背筋が凍るほどの恐怖を憶える。

「でも、あなた達に教わるほどわたしは落ちぶれてはいない」 

 理屈など通じない、アルクェイド・ブリュンスタッドに殺される・・・っ。美汐は運命の皮肉さに愕然とした。



「命なんて奪いはしないわよ。 そんなもの、何の価値もないから」 

「――」

「じゃあ、 お休みなさい」

 金色の髪を翻し、アルクェイドの去っていった。








 商店街にある古びた3階建てのビルと有名ファーストフード店の間は裏路地となっていた。
 
 裏路地を通ると、10年くらい前から誰も人の寄り付かない、 そんなゴーストハウスが一件、 ひょっこりと姿を現す。 インターネットの心霊スポットにでも取り上げれば、 たちまち話題沸騰は請け合いなそんな場所に、 濃緑のブルゾンを脇に抱え、 大きな欠伸をする、相沢祐一がやって来たのはすでに深夜を回った頃だった。

 カタカタ……

 灯りのない室内に響き渡るキーボードを叩く音。 入ってすぐ、かつてリビングとして使われていたのか、間取りが広い、その部屋から、パソコン独特の青白い光が漏れていた。

「――」

「ようっ、あゆ。 仕事はかどってるか?」

 うんっとだけ頷くと、 あゆ、と名乗る少女は黙々と画面に集中した。 何かのプログラムでも打っているのであろうか?  

 理解不能な文字と数字の羅列、それを何の差支えもなく打ち込むあゆに祐一はただただ感心し、唸った。





「うぐぅ……、ようやく終わったよ」

 硬くなった肩を叩きながら、あゆはようやく椅子から立ち上がった。

「ご苦労だったな。 で、 どうだ、 今度の――」

「聖刻02、だよ」

「ああっ。 ソレさえあれば、 ……止められるのか?」

「さて、どうだろうね?」

 くるっ、とターン。 あゆは白でも切るかのようにそういうと、手近なソファーに腰掛けた。

「ったく、 曖昧はもうこりごりだぜぇ? 皮一枚で繋がってんだ、 少しは焦れって」

「うぐぅ……、解ってるよ」

「ほんとか〜?」

「ホントだよっ!もうっ」

 祐一は自分の右腕に視線を落とした。 昨晩、 男の脇腹を抉ったその腕には、僅かに射してきた日の明かりによって模様のようなモノが描かれているのが解る。 それが聖刻だ。

 能力者と違い、プログラムを作成、それを元に神聖な存在を模した文様を刻印するというもので、誰にでも使用は可能だ。 ただ、常人では聖刻を使用する事すら間々ならない。
 
 能力者には、能力を使用する代わりに疲労や倦怠感を与えるという効果が存在するのは一般常識で、 聖刻もその辺りの原理は同様だ。
 
 その比率が可笑しいほどに高いのだ。 素人が調子に乗って使用すれば、空っからの身体が砂漠状態になることだろう。 使いかってが悪い。 それ故、聖刻は衰退の一路を辿っていった。

「べトレイヤーから、連絡はあったか?」

 祐一はうとうととしだしたあゆに訊ねた。

「――えっ!?」

「えっ?じゃない。 べトレイヤーだ。 べトレイヤー」

「あったよ。” 天野 美汐、アルクェイドとの接触に失敗す。”だって」

 重い瞼を必死にこすって、眠さに絶えていたあゆだがここにきて、ついに限界だったようだ。 べトレイヤーの報告を終えると、 あゆの体は柔らかいのソファーに沈んだ。

「秋子さん、 アルクェイドにまで……」

 祐一は苦笑いを浮かべると、 丸くなり眠るあゆを見据え、 リビングを後にした。

 


あとがき

 第1話完成。 アルクェイドさんは17分割されてませんよ〜。

 このSSの活動時間帯は夜です。 昼間は何してるんだ? それはその内閑話でもいれるつもりです。
ではでは・・・。


 感想とかもらえると嬉しいです。





 とっぷ