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第46話? 約束→ ←
振り下ろされた漆黒の鎌は黒薙の憤怒の具現である。
自身のプライドをぐちゃぐちゃに舐め腐る2人のおろかなる輩への裁きである。
断罪である。 導きの礎である。 彼が者者に告げる――。
夜の闇を貪るようにして、その漆黒は月に映えた。
黒は邁進する、その衝撃は地鳴りとなり、アスファルトを深く抉りつつも、衝撃波は秋子を直撃した。
ズンッ――。
免れない波動。
秋子は為す術も無く身を空へと委ねる。 秋子を見放すかのように月明かりは瞬く間にして、
闇雲に隠された。
夜影と、黒薙が重なる。
「能力者、たかが知れている。 たとえお前が名のある存在だとしても」
「ぐっ――」
目を見張る存在だ。 秋子はギリギリのところで横にとび、黒薙の鎌の直撃を回避した。
「無様だな」
背面を、黒薙の拳が深く抉る。
皮膚まで達した衝撃は、秋子を壁に叩きつけ、その壁をも衝撃で大破させた。
肋骨を損傷し、数本は肺に突き刺さったのではなかろうか?
呼吸の音、空気の漏れる音が秋子の口から漏れた。
秋子は考える。 自分はどうしてこんな状況になっているのか。
確かにこの存在は未知であろう。 だが――水瀬
秋子という存在はここで朽ち果てるべきか。
その是非は……。
あまりにも儚く、そして脆い。 能力者とは形ばかりの人間であるのだ、と人外のものと対したとき秋子はよくそう思う。
自分は完全な能力者と謳われているが、果たして、人間としてはどうなのだろうか?
答えはいつもあの日に戻ってしまう。
「――うっ……」
目の前を覆っているのは粉塵であった。 結界のせいで、目の前の家屋の住民はこの災害にすら気がつかない。
それが滑稽で仕方の無い話だが、秋子には申し訳なく感じていた。
ぞくっ、ぞくっ、と焼けるような背の痛みが酷が、呼吸はそれほど酷く感じなかった。
幸い、肺は免れたらしい。 だが、数本でっかい血管をやられたな――肺をやられたとどっちが苦しいか……。
破片を擦るように、黒薙の歩く音が聞こえる。
あと何歩であろうか? あと何秒であろうか?
疲弊を伴う戦いは免れるべきであった。 数週間の不在は能力の使用過多が原因で去来したものだ。
とある、追求者の名を冠する能力者との死闘。
良く作ったものが――出来すぎた話に秋子は自嘲の笑みを浮かべた。
世界はまんまと踊らされていたのだ。 隠蔽というなの戯曲を前に――。
秋子が追求者と定めた能力者は確かに卑劣な存在であった。
秋子は彼を尊敬し、同時に嫉妬を抱いた時期もある。
だが、もう、過去の話だ。 殺してしまったのだから。
そこに涙はない。
虚無に打ちひしがれた1人の女が、ただっぴろい、拉げたビルを出て行くだけの話。
歴史上から、追求者というなの被害者はこうして抹消されてしまった。
死ぬわけには行かない。 ふっと、秋子の中にたぎるものを思い出したのだ。
その男の最期の言葉”機嫌を損ねないでくれ。
俺がおろかであっただけだ、君は悪くない”。
最期まで自分を気遣う男に秋子は一遍の同情すら与えなかった。
そうだ、彼は愚かであった。
――ぶり返すこの起伏の皮肉は、今、秋子を立たせる糧となる。
比類なき能力者の追撃は――確実に息吹くのだ!
白刃、仄かに発光する秋子の両手はそのように見えた。
爛れた衣服が官能的であるものの、それに視界が集中しないほどに狂おしい。
黒薙もまた、その光景に眉を潜めざるを得なかった。
警戒を施さずにはいられなかった。
「――まだ、ここからだ、ということか?」
「いえっ――あなたも、祐一さんに手痛くやられたのは事実みたいですから、
私から警告しておきましょう。 止めませんか?
こんなおろかな争いは」
ふざけるな――。
黒薙の憤怒を煽るような発言、もちろん、わざとだ。
今、秋子にはやはり正攻法を為しうるほどの余力は残ってはいない。
だが、考えれば考えるほどいくらでも撤退を促す攻撃方法が秋子にはあった。
「――」
黒薙は殊勝な笑みを浮かべると、ニョキッ、と黒鎌は黒薙の体内へと浸透していった。
そして、代わりに圧力のようなものが制圧を図る。
決してずさんなものではない。 完璧に謀られた漆黒の黄金率が佇んでいた。
黒薙――と称する以前に、この男は数式の集まりなのではないかと思えてしまう。
深く、秋子は息を吸う――、黒薙が一歩踏み出した。
「何を企んでいるかわしらないが一言言っておく。
もう、お前には飽き飽きだ」
「あらあら、わたしもなんですよ?」
月明かりに秋子の冷静な、整った柔らかい表情が浮かぶ。
むしろ、その表情は精悍さすら、感じられた。
アルクェイドは慌てて、その場に佇む祐一へと駆け寄る。
茜の意識は朦朧としていて、シエルの術でも何もできなかった。
「これは、どういうことでしょう、水瀬 秋子」
シエルは秋子に問いかける……。 秋子はフッと微笑むと、一筋の涙『悔恨の渦』を零し、その場に倒れこんでしまう。
「何が、何があったというんですか!?」
「そんなことは、どうだっていいじゃない、それよりも、祐一の手当てが先ね――」
少しだけ、険しい顔だが、アルクェイドの顔には絶望の2文字は存在しない。
……そうですね、やや、納得いかない点もあるが、ここで、それを問いただすなんて不可能だ。
「でも、どうやって――?」
キィィィィッ――
けたたましいブレーキ音。
重ねるようにして、刹那、目の前に一台のタクシーが停車する。
「動けない方々を乗せていただけないか?」
などと言いつつ、無愛想な蔵等と名乗る運転手は運転席から顔を出した。
あとがき
46話?をおおくりしました。 次回は無論47話ですので(笑)
えーっと、手抜きじゃなくって、話の都合上、というか、なんというか……。
泡和の力不足です(ToT)
とっぷ