嗚呼、堪忍袋の緒が切れたって。
こういうことを言うんだなぁ……
「起きろやゴルァ!!」
布団をひっぺがし寒気に身を包ませようとこの女は目すら開けねぇ……
いったい何なんだこいつ?目覚ましだけで100デシベルは越えてるんじゃないか?
それでも目を覚まさない……政府の皆さん。今こそこいつを人間国宝にするべきです。
「うにゅ〜……寒いおー」
んなこと知るかい。
うだうだ言ってる名雪を無視しつつ、さっさと肩やその他を掴みながら(主に胸)揺り動かす。
この程良く大きい柔らかで張りのある弾力がまた・・・♪
……じゃなく。
「起きんかいッ!」
舞直伝、真空チョップを脳天に斜め45度で喰らわす。
この角度はチョップの破壊力が2倍になるといわれ、某チョップマスターT・F氏が開発したのが源流といわれている。
豆知識♪(不要)
それはともかく、いい音と共にようやく目が覚めた名雪。
「う〜、おはようございます……」
深々とけろぴーにむかってお辞儀をする。
おいおい。寝ぼけるのもこれぐらいにしろよこの天然♪
とりあえずほっぺたをつねって本格的に目を覚まさせてやってから(だおー!?とか言ってたのは無視)一階に下りた。
「あ、おはよー祐一君♪」
「あぅ、おはよ。祐一」
お子様ーズ。今日も全開ですな♪
「うぐぅ。酷いよ祐一君〜〜」
「あうぅ〜、真琴はもう大人だもん!」
「おっと、声が出てたかこれは失敗だなぁ」
「わざとらしいよー!」
「あうぅ〜〜〜〜〜」
ま、それはともかく飯メシッと。
「はい、どうぞ祐一さん」
おぉっ!今日もまた美味しそうな朝食♪
薄く塩が利いてそうな焼鮭にみそ汁、漬け物と垂直に立っている銀シャリ……♪
やば、食欲急上昇。
「あらあら、ありがとうございます♪」
おっと、また口に出していたか俺。ま、いつものことだし。
「いえ、言ってませんよ♪」
……深く追求はしない。これ、水瀬家の鉄則。
まあでも、美味しそうなのは確かだし。
「ええ、秋子さんが作ってくれた料理は最高ですから♪では、いただきますー!」
はむっ。
むぐむぐ……
ごくん。
……
…………
うま。
美味すぎ。
やあ、思わず箸が進んでしまうよ。
うぐぅとあぅ〜も一生懸命かき込んでいるし。
起きてきた名雪も焼鮭にイチゴジャムを……
「って待てーーーーーーーーーーい!」
思わず放った突っ込みに(名雪以外の)全員がビックリした顔で俺を見る。
「うぐぅ、ご飯中に大声出すのはお行儀悪いよ?」
「あぅ〜、漬け物落としちゃったじゃない祐一!!」
「あらあら、それじゃ私の分けてあげますからね」
「ってそこ、それ以上に名雪に対して突っ込まないんですか?」
相も変わらず棒目でイチゴジャムを焼鮭に塗りたくっている名雪。
「やめんかっ!!」
思わずイチゴジャムを取り上げ、名雪に喝を入れる。
喝=斜め45度の鉄をも砕くチョップ(違)
ごぢゅ。
……嫌な音がして名雪は倒れた。
相沢祐一は56の経験値を得た!
レベルアップ!Lv19になった!
HPが9上がった!
MPが10上がった!
ナイスガイ度が2下がった!
ボケ度はすでに最高だ!
……じゃなく!
「和食にイチゴジャムを使うなボケェッ!!」
その言葉にうんうんと同意するお子様ーズ。
「うにゅ〜……」
ピヨピヨと世界気絶判定協会名誉会長のHiyoko氏が名雪の頭を回っていた。
そーいや名格ゲーのあれ、結局クリアできんかったなぁ。
「……あれ?いつのまにか食卓に来てる・・・わっ!だれ〜?焼鮭にイチゴジャム塗ったの?」
「お前だっ!」
今度は拳で軽すぎず強すぎず頭を殴った。
こちんッ。といい具合の音。うむ、手応え充分。
「だおっ!?……う〜、痛いよ祐一〜〜〜」
「やかましい、早く食え!喰らえッ!そして吐けェッ!」
「うぐぅ、吐いたら駄目だよ〜、祐一君!」
なにっ!?あゆに突っ込まれるとは……相沢祐一、一生の不覚……!
「うぐぅ。また変なこと考えてる……」
まあうぐぅはほっとこう。
「うぐぅ」
しつこいって。
「それよりも名雪!さっさと食べ……」
……何ィッ!?
俺が見たもの、それは……
イチゴジャムを全ての料理にふんだんに使用したレッドショックだった。
これはもうビックリ。赤いロリコン彗星も驚きだ。
「ご飯三杯はいけるおー」
……いや、半ば予想していたことなんだけどね……
「早くせんかゴルァ!!」
どっかのネット廃人が使うような語彙を使う。朝も言っていたと思うが別に壺を買うわけじゃないし。
その声を向けた相手はというと……
「ご飯美味しいおー」
とか言ってる……
あーもー!いいかげん非公式の世界記録を塗り替えるのも飽きた!!増強薬使ってないのにジャックさんに申し訳が立たないぞ。
俺はさっさと靴を履き、コートを羽織って玄関を出た。
「行ってきます!」
そうして学校へと走り出したのだ。
「うしッ!記録更新!!」
100メートルの世界記録を2秒ほど縮めた俺は校門の前にいた。
いやあ、余裕があっても走る癖は無くならないな。
「あら、おはよう相沢君。名雪は一緒じゃないの?」
おぅ、この声は。
「ようあかり。今日も元気そうだな!」
「やめなさいそんな一部の人にしか解らないネタは」
それもわかる香里も香里だけどな。
「まあともかく。本当にどうしたの、名雪?」
「置いてきた」
「……妥当ね」
お互い見つめ合って、深く頷いた。
「奇跡か……?相沢がいる……」
おっと、その声は。
「北川の血を引く者よ、まずは、おはようと言うべきか……?」
ゆっくりと体を脱力させる……だが、決して弛緩させているわけではない。
言うなれば反応。硬直は自らを殺す。
肉に固さは要らない。研ぎ澄まされた反応だけがあればいいッ!
「フフ、挨拶などは要らぬ……そう、我らは力でのみ会話をするのだッ!!」
俺の声を受けた北川はゆっくりと構えを取った。
奴は斬鉄・・・肉を斬り、骨をも斬る拳を持つ漢だ。
ならば俺の取るべき構えは内部破壊。その拳を破壊する……!
「行くぞォァ!」
「あたぁっ!」
二人の拳が交差しようとする直前……!
「いいから行くわよ二人とも」
「あ、はーい」
「おい美坂ぁ、待ってくれよ〜〜」
ともかく、突っ込んでほしかったなとか思う祐ちんでした。
HRが始まる寸前、ようやく名雪が教室に入ってきた。
その眼は俺を非難しているように見えるが無視。
「いーちーごーさーんーでー…………」
とか呪詛のように言い続けているのも無視。
そんなこんなで一時間目が始まった。
「相沢ッ♪お昼休みだぞッ☆」
一瞬の躊躇無く耳元で囁いている男へ地獄突きを喰らわす。
「げはっ!」
見事に喉仏に入った。うむ、我ながら昨今にない角度だ。さすがアブさん直伝。
「北川。完全無欠に気持ち悪いからやめろ」
次はこんなもんではすまさない、と眼孔に込める。
かひゅー、かひゅーと地面をのたうち回りながらあえぐ北川を踏みつけ、俺は教室をあとにしようとした……
「ゆーいち」
が、甘かったみたいだ。
後ろから名雪の声。ついでに肩も掴まれちゃったりして。
しかもそれが尋常の握力じゃないし。痛い痛い。
「と、トランプが千切れちゃうよ!?」
んなことのたうちながらゆっくりと振り向くと、そこにはムスッとした顔の従姉妹がいた。
「イチゴサンデー」
どうやら彼女の頭の中はイチゴだらけのようだ。
「放課後、百花屋」
しかも確定しているっぽい。一発ツモ?二幡縛りで有効だったっけ?
「じゃなきゃ祐一のご飯紅生姜だよッ♪」
……またこれか。
俺はこれで何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もイチゴサンデーを奢らされた。
こいつの我が儘のために何枚福沢さんが飛んでいったと思うんだ?
いいかげん俺が持たない。大佐!装甲が持ちません!
……結局無駄死にだった気が(違)
「……無駄死にではない、無駄死にではないぞ!」
「?なに言ってるんだよ祐一」
……無視しろ。つまり俺が言いたいのは、だ。
「今後一切お前にイチゴサンデーを奢らないことをここに宣言する!200X年某月某日、全福沢諭吉代表、相沢祐一!!」
はっきりと言ってやった。
もうこいつには一片たりとも奢らない決意。
「え?いいの?朝ご飯も昼ご飯も晩ご飯も全部紅生姜だよ!?」
わたわたと慌てたように名雪が付け加えた。
だけど、俺の信念は折れない!曲がらない!挫けない!!
むしろ反逆!しすぎはちょっとやばいけどね。
そもそもだ。名雪が食事の全権を握っているわけじゃない。
良識ある秋子さんならそんな娘の奇行を止めてくれるに違いない。
と、いうわけで。
「好きにしろ。とにかく、新渡戸さんに誓って俺は絶対に奢らないからな!」
ちょっとランクダウンした感じで俺は食堂へと向かった。
後ろで惚けている名雪を残して。
で、放課後。
「放課後よ、相沢君」
うむ、このセクシーボイスはかおりんか。ぜってー年齢詐称しているよなー……!?
「なに、相沢君?」
な、なんだその笑顔……娘を目線で殺せるナメック星人の如きアイ!
いや、俺は声に出してはいなかったぞ……?女のカン、怖し(涙)
「おう。んじゃ帰りますか……」
立ち上がろうとしたところで、名雪と目があった。
そういや今日は名雪がメッセンジャーじゃないのか。
朝と昼休みのことを根にもってんのか?
ま、別にいいけどな。
「祐一、強がっていられるのも今のうちだからね……」
とか聞こえた気もするが無視無視。
「お帰りなさい祐一さん」
寄り道せずまっすぐ家に帰った俺を迎えたのはエプロン姿の秋子さんだった。
なんつーか、いっつも帰ってくるタイミングに玄関にいるよな……ま、秋子さんだしいいか。
「ただいま、秋子さん。あれ、あゆと真琴、まだ帰ってないんですか?」
玄関に靴がないから、出てるのか。
「ええ、あゆちゃんはお使いに、真琴は幼稚園の行事があるとかで今日は遅くなるようです」
「そうですか」
うんうん。あゆも真琴も自分のできる範囲で頑張っている。
兄として嬉しいぞお子様ーズ。
「あ、そうそう。祐一さん」
居間に戻ろうとした秋子さんが振り返ってこっちを見た。
「私、今日は仕事の関係でもうすぐ出かけなくてはならないんです。ですから、今日の夕食は名雪に任せますから」
……え?
何でこのタイミングで……?
俺は靴を脱ぐ手が止まってしまった。
と、いうことは……
祭りの予感……?
そんなこんなで夕食。
名雪が腕を振るった料理は、さすがに秋子さんには敵わないとしても立派なものだった。
俺のを除いて、だが。
「あぅ?なんで祐一だけ紅生姜なの……?」
「うぐぅ?」
語尾『ぅ』同盟が不思議そうな目で俺の茶碗を見てやがる……
「新しい名前付けないでよー!」
「うぐぅ、祐一君がいぢめるー」
ちなみに栞も入るぞ。
二人とも例に徐ってほっておき、俺は目の前の紅生姜を凝視した。
見事に茶碗一色真っ赤っか。
食ったら食ったで吐き気をもよおしそうな量だな……
「さ、いっぱい食べてよね祐一♪」
「断る」
テーブルの下に手を突っ込み、一瞬にして上方へ弾き飛ばす。
赤い固まりが宙を舞い、見事に名雪を朱に染める。
うむ!星さんのお父さんもまっつぁおなちゃぶ台返しッ!!
「だおーっ!?」
名雪の髪が赤に染まった。
これで通常の三倍早く起きれるはずさっ!
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「唸っても無駄無駄ァッ!俺に紅生姜を食わせようとした時点で貴様は間違っている!!」
ちゃぶ台返しをしたポーズのまま叫ぶ。
「キュウリにハチミツかけてメロン味!嘘をつくなああああああああああああ!!!!」
「ゆ、ゆーいちが壊れちゃった……」
「うぐぅ、祐一君……」
「つーわけで俺は外食をする!ええい止めるな肉が俺を待っているんだーーー!!」
いまだ寒い冬の外套に飛び出ようとコートをひっつかむ。
そして財布の中身を……!?
「しまったーーーーー!!金下ろすの忘れてたーーーー!!!」
そう、俺の財布は空っぽさ!
諭吉さんどころか夏目さんが一人のみー!?
あとは……新500円玉が一個。
うあ、なんだこりゃ。
「いやいやいやいや、たしか貯金なら9時まで・・・」
階段を駆け上り通帳を開く!
残金 2012円
「ほわーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと!?」
ちょ、おい!何でこんなに少ないんだ!?
たしか諭吉さんが20人近くいたはずだぞ俺の貯金!!
なんで夏目さんが二人になっているの!?
はっ、まさか集団ボイコットかっ!?
「しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっと!!」
階段を駆け下りる。
まーさーに悲劇!
これもそれもっ!!
「この猫蛙偏愛苺ジャンキーがーーーーー!!」
階段の手前にある壁に足を付き、跳躍。
「あぅっ!?」
その目の前にいた真琴をとりあえず超天空×字拳で撃墜。
「あぅぶっ!」
盛大な喀血を空に舞わせる……ああ、綺麗、だ。
その反動で一回転し、床に着地。足のバネを使って居間へと躍り出た。
「あ、祐一く」
振り向いたあゆの両肩を握り、足を延ばしたまま前方宙返り。着地と同時に慣性を使ってスローイングで投げ飛ばす!
「うぐぅぅぅぅ〜〜!!」
最大加速でちょうど開け放っていた窓から飛び出ていくあゆ。いい角度だ。ゴンとか聞こえるし。
「な゛ゆ゛き゛〜〜〜〜」
大技を多用したためか、どうも体がキツイ……が、俺にはやることがある。
そう、俺の尊厳のため名雪に○○○や×××なことを△□るまでとことん!!
……違う!
「あ、わ、わたし祐一なら○○○や×××なことを△□ることだってできるよ……」
……しっかり声に出して言っていたようだ。
頬を染めて体を抱いている姿は普段の俺だったらノックアウトしていただろう。
しかし!俺は!今!猛烈に!!おぉこっているうううぅぅぅぅぅ!!!!!
「じゃかやしやーーーーー!!」
膝の皿めがけて蹴り下ろし、体勢が崩れたところを首相撲からのニー!ニー!ニー!!
「だおっだおっだおっ!!??」
更に懐に潜り込んで名雪の体を天井めがけて蹴り上げる!
「だおぉ〜〜〜〜!?」
瞬後、腕の力だけで跳ね上げた名雪のもとまで跳躍、逆さになった名雪の首、足、腕を極めた。
その体勢のまま……着地。
「だ、だお……」
ボキベキバキと名雪の体を通して伝わる破砕音……ああ、決まった。
「よ、48の殺人技……」
復活した真琴が恐ろしげに言うのが聞こえる。
ふっ、師匠(秋子さん)から教えてもらった技、役に立ちましたよ……
夜空に浮かぶ星が俺を称えてくれる気がする……ありがとう、しぃしょおおおおお!!
技を決めたまま涙混じりに敬礼した。
主要関節を破壊された名雪は沈黙している……うむ、これで悪の根は断った。
……はっ!?そういえば、明日の食事はどうするんだろうな……
まあ、なんとかなるか。
「だ……お……ギブギブ……」
一本足四の字を極めつつ、俺は明日の食事の心配をしているのだった。
まず中華鍋を火にかけ、煙が出るくらい強火でカラ焼きをする。
完全に熱した後、油を入れて中華鍋に馴染むようによく回す。
そうしたら一度油を取り除き、料理用の油を入れる。
下味を付けた細切りの牛肉と同じ細切りのタケノコを中温の油に入れて油通しする。
肉と肉がくっつかないようにお玉の背ですばやくほぐし、最後にピーマンの細切りを入れてひと混ぜしたら引き上げる。
さきに熱して油をひいた中華鍋に油通しした牛肉、タケノコ、ピーマンを入れ、すばやく火を通し酒、醤油、胡椒、砂糖、スープ、ネギ、水溶き片栗粉を混ぜ合わせた混合調味料を入れて二、三回ほど中華鍋を返す。
中華料理はこの三回の行程、鍋の準備を整える連鍋(レンコウ)、素材の美味さを閉じこめる泡油(パオイウ)、味付けの椀献(ワンチェン)が基本。
これで青椒牛肉絲の出来上がりだ。
「あう〜〜、いい匂い〜〜〜♪」
横で一連の調理を見ていた真琴がよだれを垂らしている。
しっかし、何でこの家はこんな本格的な中華鍋とコンロがあるんだろうな・・・しかも椀献も本場顔負けの味のやつがあったし。
まあ秋子さんだし、考えても仕方ない。
鍋から皿に移し、密かに作っていた杏仁豆腐の様子を冷蔵庫を開けて確認し、茶碗にご飯を三人分盛りつけてテーブルに置いた。
「あゆー、出来たぞー!」
「わかったよー」
居間でテレビを見ていたあゆがテーブルにつく。
真琴はすでに指定席に着いており、箸を手に持っていた。
「それじゃ、手を合わせて」
なぜか真琴が幼稚園風に手を合わす。
無論俺もあゆも同じようにやってるわけだけど。
「「「いただきます!」」」
「う〜〜〜、わたしのぶんは……?」
「無し」
旨そうな匂いにつられてきたのか、俺の横で指をくわえている名雪。
それを無視しながら俺はご飯を口の中にかき込んだ。
「うぐぅ、美味しいよ!」
「ゆういちがこんなに美味しいご飯作れるなんて〜♪」
お子様ーズは心底幸せそうに俺の作った青椒牛肉絲を頬張っている。
「一応住んだことのある国の料理は作れるぞ。中国、フランス、ロシア、インドだな。あ、日本料理だけは駄目なんだよな」
日本料理は母さんが専門だったから覚える必要なかったし。
「うぐぅ!?外国行ったことあるの!?」
「ん、1年ずつな。言葉は日常会話程度なら話せるぞ」
「あうー、ゆういちのくせに生意気よぅ!」
「知るか。それより冷めないうちに早く食っちまえ。食後のデザートもあるからな」
と、二人の目が一気に光った。
あゆはうぐうぐ言いながら、真琴はあうーとか言いながら一生懸命ご飯を食べている。
「さて、と。名雪」
隣で拗ねている名雪に向かい直る。
「う〜、なに、祐一」
「反省しているか」
「何を反省するんだよー!祐一が悪いのにー!」
……ぷち、と何かが切れた。
こいつ、まだわかってねぇのか……
「……ほう、そうか。まあ俺も言い過ぎたし、ほら、これ食べな」
青椒牛肉絲の前に作っておいた酢豚を差し出す。
……糖醋(タンツウ/甘酸っぱいあん)に少々工夫した酢豚だ。
「わかればいいんだよ♪」
嬉しそうに箸をのばす名雪。
なんの疑問も抱かず、それを……食べた。
「う〜ん、おいし……!?」
「それは夢。邪なる悪夢を抱いた存在」
名雪の顔がどんどん青くなる。
何が入っていたのか、それを理解し、必死に拒絶しようと藻掻く。
だが、それは口に入ったが最後……吐き出せない。
まるで生き物のように味覚を蹂躙し尽くし、食堂に向かって流れていくのだ。
「だ、だ……お……?」
「それを作る原料も過程すらもわからぬ。人は……否、生物は根源の恐怖を込めてこう名付けた」
曰く、ナイトメア・オブ・オレンジ。
曰く、黄土の這いずるモノ。
曰く、神魔を殺戮せしめる唯一つの道具。
「忘却の彼方にある存在。祖は音もなく這いよる生命」
忘れてはならない。忘れることもできない存在。
その名は。その絶対物の名は。
「その名は、謎邪夢」
いま、名雪の世界は黄昏に包まれているだろう。
これは人が扱うにはあまりにも強すぎる道具。
核をも凌駕する最強最悪のあしきゆめ。
「名雪、わからないのならずっと悪夢の底にいろ」
決め台詞とともに残った酢豚にラップをかけて冷凍庫に入れた。
冷蔵庫ではない、冷凍庫だ。完全に凍らさないと……増殖する。
「さて、食事を続けるか……っておい!もう全部食べたのか!?」
野菜の一片たりとも残っていない皿。そして椅子に座ったまま至福の表情で微睡んでいるお子様ーズ。
……まあ、作る側としては嬉しいけどな。
「はふぅ、美味しかったぁ……」
「けぷっ。満足よぅ……」
まあ二人とも喜んでくれたみたいだからいいか。
「ほれ、デザート」
冷蔵庫の中から冷やした杏仁豆腐を差し出す。
「「わーい♪」」
嬉しそうにスプーンで掬いながら食べる二人を微笑んで見つつ、いまだ痙攣している名雪をほったらかしてぴろに餌をあげた。
「うな〜♪」
嬉しそうにカツカツと食べるぴろ。
う〜む、可愛い。
そう思いながら、やばげな泡を噴く名雪を無視しつつ食器を片付けて洗っていった。
とはいえ、俺だって健康な高校男子。
少しだけの夕食に満足するはずもなく、案の定23時を回るころにはお腹が空いてきた。
「……しゃーない。夜食作るか」
冷蔵庫の中にあったものを思い浮かべながら部屋を出た。
「あー、たしか冷やご飯あったからな……炒飯でも作るか」
かちゃ。
階段を降りようとしたとき、玄関のドアが開いた。
そこにいたのは、少々頬を赤くしていた秋子さん。
「ただいま、祐一さん♪」
ちょっとテンションが高めな声。お酒を飲んできたんだろうか。
「お帰りなさい、秋子さん。お仕事お疲れさまでした」
ねぎらいをこめてそう言うと、秋子さんは微笑んで……!?
「う〜ん、祐一さんは優しいですね……」
だ、ちょ、え!?
あーと、秋子さんもしかして……酔ってる?
そうじゃなきゃ、その、俺を正面から抱きしめることなんて……!?
しかもしなだれかかるように……秋子さんって、こうしてみると美人だよな……
……はっ!?いやいやまてまて!いくら血が繋がってないとはいえ、秋子さんは叔母に当たるわけでましてや一児の母とは思えないほど若々しくて肢体も瑞々しくて少しだけ漂ってくるアルコールの香りが更に俺の心を揺さぶるって俺待て!うあ、胸が、胸が!!
「祐一さん、美味しそうですね♪」
……はい?
オイシソウデスネ?
「いただきま〜す」
かぷり。
耳に柔らかい湿り気を帯びた二つの肉が重なっているわけで、白い歯で軽く甘噛みしているわけで。
「う、うあっ!!??」
あ、み、耳ッ!?
痛……くはないけど、その、あの、ちょっと、え!?
秋子さんが耳をかぷってしかも少しだけ舌を伸ばして外側をなぞるよーに舌を動かしているわけでそれが気持ちよくて意識が飛びそうでああもう人妻万歳未亡人マンセーってでもその秋子さんは血が繋がっているってわけでそんな事するわけにはああもうそんな事ってなんだ解ってるじゃないかあんな事だよだから誰だよお前良心欲望のせめぎ合いなんて関係ないよこの場合ああもうとにかく秋子さんに離れてもらわなくちゃ何やるかわかんないアルよ俺!限界近いよ俺の将軍!!暴れっぱなしになってしまう!?いや硬いし黒いし暴れっぱなしだし(法に)反逆する気満々ですよ今の俺!
「了承♪」
その言葉で切れました。
ええ、何かがぷっつりと。
「あ、秋子さーーーーーーーーーーん!!!!!」
「きゃん♪(はぁと)」
いっつ、ルパンダイヴ!!さあ禁断の○○○○(あまりに危険すぎるため作者権限削除)へ!!
「「「だめー!!」」」
聞いた話で悪いが、その後の行動はこうだ。
まず、真琴が凄まじい足払いで俺の体を空中に浮かし、重力のない空中で充分に加速したのち、名雪に向かって投げつけた。
名雪は陸上部で培った脚力を充分に使い、トップスピードからのドロップキックを顔面に。
俺は(なぜかあった)ロープに吹き飛ばされ、天使の羽根を装備したあゆにうぐぅタックルを背骨に喰らった。まさに筋肉千年期。
そりゃあもう、肉のカーテンすら効かない見事な連携だったらしい。
記憶はないけどな(涙)
「う、うぅん……」
知らない天井だ……え、使い古してる?つーか知りすぎている天井……ッておい、待て。なぜ、どうして、俺は秋子さんの部屋で寝ているんだッ!?
「ふわッ!?」
思わず体を起こそうとして……え゛?
なんか、スースーとして……なぜ、俺は素っ裸なの?
そしてなぜ素っ裸の秋子さんとあゆと真琴がいるの??
なぜそこはかとなく満ち足りた笑顔で俺の両腕を枕にしているの???
秋子さんなんて俺の上に乗っかっててっておいおいオイオイオイオイ!!??
あ、でも、なんかあったかくて幸せーな気持ちに……
「……ま、いいか」
そうして、俺はまどろみの中に落ちていった。
人の温かさって、なんか安心するんだよな……
とか綺麗にまとめてたけど、この後起こしちゃって無制限ギブアップ方式で頑張っちゃいました。
3時ぐらいで全員K.Oさせましたよ。
これが若さか……いや赤いのはロリコンだったな……俺もッ!?
余談。
朝に秋子さんに裸エプロンで起こされました。
5時ぐらいだったのですが、また頑張っちゃって7時までイタしてました。
声で起きたあゆと真琴も巻き込みました。
なんつーか、自分ホントに堕ちてってるなー。とか思いながら。
え、名雪はどうしたって?
寝てました。
親子丼は無理だったか。
終われ。
あとがき
初めまして。Kという流れの小説書きです。
今回管理人殿のご厚意に預かり、この小説を掲載させてもらえることになりました。
今後ともよろしくお願いします……
はい、堅苦しいのはここまで。我輩のノーマルテンションに戻したいと思います!
祐一の一日シリーズ第一弾、水瀬家編をお送りしました!
そう、第一弾です。短編シリーズとして続いていきます。今のところ『学校編』を予定しています。さて、今回の出演キャラに参りましょう。
相沢祐一
キャラ変わりすぎな高校三年生。この小説では自由を求めてはしゃぎ回る男として活躍。
ちなみに全員救っている。据え膳は全部食べたが(爆)
水瀬名雪
非常にいじりやすいキャラ。イチゴサンデーをたかろうとしては祐一の逆襲にあう。
あの目覚まし時計は存在していない。今は嫌がらせのため東方不敗のセリフが入っている。祐一に食われ済み(笑)
沢渡真琴
作者お気に入り。だがよく吹っ飛ばされる薄幸のキャラ。
保育士の免許を取り、晴れて保育所に就職することが決まった。子供には好かれやすい。祐一に食われ済み(笑)
月宮あゆ
影が薄い(爆)だが案外いいとこをもらってってる。
秋子さんがザメハを使って目覚めさせた(爆)。大検を取るためただいま勉強中。祐一に食われ済み(笑)
水瀬秋子
最強の主婦として認定。作者一番のお気に入り。お酒に酔うと色っぽくなる(趣味)
車に轢かれそうになったが、その拳で逆に車を大破。オーガとタイマンで戦える主婦。祐一を喰らい済み(笑)
美坂香里
今回はちょい役。しかし学校編では突っ込みとして大活躍(の予定)。
単体での戦闘力は秋子さんを除いて最強。拳が唸るとき誰か(主に北川)が吹き飛ぶ。祐一には食われていない希有な女キャラ(笑)
北川潤
例に漏れずギャグキャラ。扱いやすいキャラとして作者お気に入り。
超回復力と香里ラヴで有名。実は意外と色々なことを知っている。富樫タイプ(違)
それでは次の小説で〜♪
謎の人物「っふ、次は私が……」
!?
Kさんよりいただきました〜。
ハーレムものですね。
個人的にはぴろが大躍進してるのがお気に入りです。
「うな〜♪」ってな・・・(///)
短編連作だそうです。 がんばってくださいませ。
ではっ