騒がしい足音と朝の日差しが俺の脳と身体を起動させた。
カノエア!
第2話
「うっ……」
朝、か……。
「――真琴、何してんだ?」
「へへへ〜っ、いいでしょっ!」
真琴が、いた。
しかもその格好はシルクかなんかのいい素材の……黒のレースがいっぱいの、その、
ゴスロリ、てやつだ。
「ねっ、祐一、かわいい?かわいい?」
冬の頃に比べればかなり素直になった真琴、
今、ふわりっ、と一回転した。
――天野が見たら喜びそうだな。
「で、真琴?お前、なんでそんな格好なんだ?」
「えーっ?だって旅行に行くって言ってただしょ!だから秋子さんが買ってくれたの」
「真琴が選んだのか?」
「あったりまえよぅ。他に誰がえらんでくれるってのよぅ!」
「……天野か名雪」
得てして微妙だが、真琴の回答が返ってこない。
「納得」
「おい、」
まあ、取り合えず、真琴の素直じゃない所とその清楚な服装が相まって以外に可愛いかもしれない。
いいものを見せてもらった。
そこで脳裏にある考えが過ぎった。
「なぁ、真琴?写真撮っていいか?」
「あぅ?」
「いいなっ?いいなっ?」
「えっ、えーっと、うんっ」
ベッドから這い上がり、真琴に詰め寄る。
最初はシドロモドロ困惑していたものの最後は耳まで真っ赤にして了承してくれた。
「じゃ、いくぞー」
「綺麗に撮りなさいよー」
こういうときはインスタントはだめだ。
実家から持ってきたカメラ、――親父からかっぱらったラ○カで10枚ほど撮ってやった。
しかし……俺の室内でこんなことやってると、かなり恥ずかしいことに今更気付いた。
もっとも、真琴は乗り気だったのでいいとしよう。
「真琴、じゃ、礼に小遣いをやろう」
「へっ?祐一、熱でもあるの?」
「いやいや、いいものみしてもらったお礼だ」
「……へんなのーっ」
とかいいつつちゃっかり真琴は俺の式部さんを掴む。
ばたばたと騒がしい足音を立て、真琴は去って行った。
2000円の価値は十分にある。
取り合えず、電話は名雪達が行ってからにしようと思い俺は下に降りた。
「ねぇ、祐一君、ボクも写真撮って欲しな〜」
まずった、あゆを忘れていた。
逸らそう、秋子さん辺り、すんごく勘がいいから多分ばれちまう。
そこで、俺は、キッチンから出てきた美鈴に目をつけた。
「観鈴、おはよう」
「あっ、えっと、おはようございます、祐一さん」
「うぐぅ!?」
よし……まず、第一段階は成功だ。
俺はあゆをスルーして観鈴の前に向かった。
「観鈴、これから暇か?」
「にはは、暇ですよ」
「じゃ、置いてかれたもの同士、どっかいかないか?」
「えっ?」
「いや、どうせこの辺なれてないんだろぅ?」
「―――」
さっさと答えてくれ。あゆへの呪縛が解けてしまう。
さすがにガメかもしれないが、ちょこっとくらい収入が欲しい。
なんせ長期休業なわけだ。なだれ込むようにして出費があるに違いない。
「あのっ、本当にいいんですか?」
「もし嫌だったら俺が地図を描いてやる」
特製のイラストつきのな。
「にはは、わたしも地図描くの好き」
「そっ、そうか。とにかくっ!行くんだな?」
「うんっ。お供します」
こうして、俺の春休み初日とあゆ撲滅作戦は無事解決した。
だいたい8時30分頃だっただろうか?
けたたましいバイクの音とともにロングの赤い髪の女性、神尾晴子が家にやってきたのは。
さすがに連泊用、ということもあって手荷物は大きめだ。
「いらっしゃい、晴子」
「あーっ、秋子さん、観鈴、平気やった?」
「ええっ、とってもいい子でしたよ」
「そか……」
晴子さんは俺の隣に座っている美鈴を見やった。
「じゃ、観鈴、うちは数日ほど旅行に出かけるけど何か困った事あったら祐一に頼んでな」
「にはは、大丈夫、おかあさん。わたしはしっかり者」
「そうやったな。ほな、秋子さん行きましょうか?」
ううむ、晴子さんはかなりマイペースだ。
しかも俺の名前を知っていた辺り端っから俺に世話させる気だった……っ。
何か傀儡って気分だが、そんな間に、名雪、あゆ、真琴はしっかりリュックなりカバンなりを背負って
準備万端――、さて、1人暮らしを満喫させてもらうかな……。
「じゃあ、祐一さん、出かける時は鍵のかけ忘れの無いようにお願いしますね。
それと、何か用がありましたら……」
「名雪の携帯に掛けます。心配しないで楽しんできてくださいっ」
「そうですねっ。じゃあ、よろしくお願いしますね」
「祐一〜、お土産楽しみにしててねー」
期待しないで待っててやろう。
「祐一君、ボク、いないけど、バカなことしないでね」
お前に言われたくないぞ…、あゆ。
「じゃ、精々、息抜きしてくるわ」
「うんっ、お母さん、くつろいで来てね」
と、真琴が俺に近づいてきて、耳打ちした。
「あの写真、ちゃんと焼き増ししといてよっ!」
「……お前、賢くなったな」
こっそり真琴の懐に手持ちの300円を追加してやった。
「もしもし、天野か?」
例の如く俺は天野に電話を掛けている。
勿論、真琴のゴスロリ写真を安く提供するためだ。その、当社比で。
『相沢さん、私じゃなかったらどうするんですか?』
「いや、別に?」
『はぁ……何か用ですか?』
「いや、急に天野の声が聞きたくなってな」
『――冗談はほどほどにしてくれませんか?』
「……すまん、いや。真琴のいい写真が手に入った」
『―――――』
「なんと、ゴスロリだ。……ちらっと見えてるのもあるぞ?」
『………酷な、いえ、その写真、本物か確かめたいです。コラージュだったら――』
「残念だが、今日撮った本物だ。すぐにうちに来い」
『はいっ、母に断ってそちらに、即座に向かいます』
「ああっ、すぐに来い」
『……ときに、相沢さん、最中とかお好きでしょうか?』
……。お前、そこまで落ちていたか。
何だか、真琴がかわいそうになってきた。きっと、真琴がいないってわかってるからだろうな。
ここまで手が回るのは。
でも、俺は甘いのが苦手なので謹んで辞退させてもらった。
第3話
あとがき
美汐さんは真琴がかわいい、と思っているわけで、けっしてやばやばな人じゃありません。
次回はみすずちんと買い物編です。
感想くれると嬉しいです。
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